かたはらの匂ひ妖しく項垂るは盛り越す鳥海薊かも
wilting flowers
with mysterious air
by me
is it Chokai Thistle past
peak bloom?
🄫2022Rika Inami
先日、鳥海山(2236m)に行ってきました。やや曇りでしたが、にかほ市側の象潟の鳥海ブルーラインをドライブし5合目近くの鉾立まで車で行きました。
紅葉はまだ始まったばかりでしたが、鳥海山はいつ来ても清しさあふれます。
鉾立には300台駐車できる大型駐車場、みやげものなども売られている国民保養センター稲倉山荘、鉾立ビジターセンターがあります。付近をすこし歩きまわった後、思い切って鉾立登山口から少し上のほうに登ってゆきました。
すこし登ると鉾立展望台(5合目1150m)があります。
展望台には幼い女の子を連れのパパさんがお弁当を食べていました。
私の後からは、白髪の姿勢の良いきびきびした高齢の男性がやってきました。
上着無しのシャツとズボンの軽装で鳥海山を歩きなれているという風に私は見ました。
もしかしたら、鳥海山の登山を警備している人かしらと思いまでしました。
ここで少し休み、さらに石の道を登ってゆきました。
実は、私は家の制約があり、長時間の夕方遅く帰宅するようなピクニックはNGになっています。私の健康上のせいではありません。とかく心配症の家族がいるせいで、自由な行動はできないのです。
こうして時間を気にしつつも私は登ってゆきました。
景色の写真を撮るために足取りはゆっくりでした。
なんといっても時間はまだ11時半にもなっていません。
もうちょっと上にいっても良かろうと私は判断しました。
時には結構傾斜のきついごつごつした岩場の道の途中、後ろからあの方(白髪の男性)が追い付いてきました。
「どこまで? 頂上まで?」と私は訊かれ、「いえ、その辺までです。こんな軽装ですし、家族が心配するので頂上までなんて滅相もありません。早く帰らなくちゃならないのです。もうそろそろ降りようかなと思います」
「ふむむむ……もうちょっと登るといいんだけどな。もうちょっと登ると綺麗だよ」
私は迷いましたが、誘いに乗って登ってゆきました。
はろばろと遠くあほぎし鳥海に今日は登りて錦秋たまふ
山霊の権化なるかな白髪翁なほ登れやと声を掛けにき
(C)2022稲美里佳
なるほど登るにつれて紅葉も盛んになっていました。
が、天気が曇っていたせいか、以前登ったよりは紅葉の色がくすんで見えました。
写真を撮りながらのぶらぶら歩きだったので、速度はきわめてのろく、あの白髪の男性は、すぐに私の視界から見えなくなりました。
途中で家族から電話がありました。
「もうすぐ降りていくから」と私は応えました。
じきに、あの方が降りてきました。
「もうちょっと登るといいよ。きれいだよ! もう1時間ぐらい歩くと賽の河原だよ。いや、その足じゃ2時間かな」」
「はあ、でも家族から電話があって……」といいつつ、私は上を見上げて登ってゆきました。
が、天気が曇りなので心配をかけてはいけないと思いました。
登りつつ、この辺で降りたほうが良いのかもしれない、もしかしたら雨が降るかもしれない、と思ったのです。
(次回、お天気のよい時にもっと登ろう)
下山途中、登るときには気づかなかった、項垂れているあずき色のどことなく不気味な妖気が漂っている花に目が留まりました。
大きく伸びて萎れかかっているのでしょうか。
写真に撮りました。
鳥海薊? が、薊にしては葉に棘がありません。
が、やはり鳥海薊のように見えました。
歌の結句は最初「鳥海薊はも」としたのですが、結局「かも」で抑えました。